※この記事は『インターネットマガジン2005年10月号』に掲載されたものです。文中に出てくる社名、サービス名、その他の情報は当時のものです。
2010年には100か国20言語で
10億人にサービスを提供したい
※この記事は『インターネットマガジン2005年10月号』に掲載されたものです。文中に出てくる社名、サービス名、その他の情報は当時のものです。
2010年には100か国20言語で
10億人にサービスを提供したい
現在、日本でも数多くのQ&A サイトが存在するがその元祖といえるのが「OKWeb」だ。一言で「質問&答え」といっても、膨大な数のユーザーや情報管理の厳しい企業の中で運営していくには、数々のノウハウと経験が必要とされる。
日本のQ&A サイトではNo.1 を自負し、さらに世界一を目指すOKWeb。設立者で代表取締役社長を務める兼元謙任氏に、Q&A にかける思いと将来の目標、夢について語ってもらった。
文:仲里 淳(編集部)
写真:島津 隆雄
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- 所在地:東京都渋谷区道玄坂
- 設立年月:1999 年7 月
- 代表取締役名:兼元謙任(かねもとかねとう)
- 社員数:55 名(2005 年8 月現在)
- ウェブ:http://www.okweb.co.jp/
- 事業内容:Q&A 形式の情報交換コミュニティーサイトの運営
Q&A の本質は即答ではなく話を聞いてあげること
――取り組んでいる事業の概要をご説明いただけますか。
●「OKWeb コミュニティ」というQ&A コミュニティーサイトがありまして、困った誰かが無料で登録して質問すると、それを見た誰かが答えを書くというものです。現在、40 万会員、650 万件のQ&A、350カテゴリーがあります。1 日に5 0 0 0 ~10000 件のQ&A がやり取りされています。
Q&A の内容は、お料理や就職といった身近で日常的なものから人生相談まで実に多彩です。このサイトでの主な収益源は、キーワードマッチングなどの広告です。
ほかには、最近はほとんどのサイトに「FAQ(よくある質問と回答)」がありますが、「OKWeb コミュニティ」の仕組みを利用して、コールセンターなどで、有効な
FAQ を効率的に管理しながら、お客様のサポート業務を効率化するシステムを提供しています。さらにこの仕組みを企業内に導入して、情報の共有や活性化のためのツールとして使っていただくサービスも行っています。
――公開型や企業向けも含めて、OKWebサイトの運営という業務は、具体的にはどういったものなのでしょうか。
● コミュニティーの場合は内容のチェックがあり、その修正や削除、さらにそこから優れたコンテンツを抽出して、ウィークリーマガジンのような読み物にするといったことを行っています。
企業向けのサービスは、先にお話したサービスをASP でインフラも含めた運用・運営代行、パッケージの提供では、コンサルティングから始まり、どうやって運営するとサポート業務が簡単になるか、例えばスタッフの配置であるとか、カテゴリーの作り方、サポートのルールなどをお手伝いします。また、企業の場合は情報の扱いが厳しいですから、その判断や管理についてアドバイスもします。
これまでのサポートというのは、顧客からの質問には「なるべく早く返事しろ」みたいな考え方が一般的だったと思いますが、僕らは、顧客と企業のサポート担当者のコミュニティーなんだという発想をしています。そういう風に根本の発想が異なると、ポリシーや答え方も違ってきます。本当に大切なのは「聞いてあげること」で、カンウセリングなんですね。まずは、話してもらうこと、そして話せる場があることが解決につながるわけです。
――コンテンツのチェックというのは、担当者が逐一読んで手作業で行うのですか。
●ある程度までは機械的に自動化されています。だいたい7 段階くらいまで機械でやって、そのあと人、さらに機械、また人という風にチェックのポイントと段階を分けて行っています。企業内で使われる場合は、すでに情報のチェックは半分済んでいるようなものなので、チェックの段階は少なくて済みます。
競合に対するアドバンテージは先行者として蓄積された経験値
――同様のサービスがほかにも出てきていますが、それらの競合相手に対する強み、差別化はどういったものでしょうか。
●かれこれ5、6 年取り組んできましたから、運営のノウハウや経験が蓄積されています。例えば、内容のチェックをどこまで自動化できて、どこまで人手でやらなければならないかといったグレーゾーンの判断は難しいものです。新興のサービスはこれから突き当たる問題だと思いますが、そこは先行者メリットととしてアドバンテージがあります。
見た目は同じようなサービスでも、根底の部分がしっかりしていないと本当に役立つものにはなりませんし、結局はユーザーに使ってもらえなくなります。例えば他社のサービスでは、Q&A の数が充実しているといっても、実際に見てみると同じようなQ&A が並んでいたり、そもそもQ&A として成立していないようなものもあります。また、落書きが1 週間以上も放置されている場合もあります。OKWebと比較したときにその差は明らかですし、最後は市場が判断すると思います。
さらに1 つ欠かせないのが、企業への提供と運営で得た経験です。「コミュニティーだから、勝手にやらせとけばいいさ」といった考え方では、企業での運営は不十分で、情報の重みを意識することが必要になります。特に、企業のヘルプデスクと顧客とのコミュニティーをうまく回すというのは非常に難しいんです。
正直、企業に提供するのは大変だったりもしますが、そこをきちんとやってきたおかげで、非常に価値のある経験を得ましたし、評価もいただきました。
また、優れたユーザーの見つけ方も知っています。これは何につながるかというと、優れた回答のスキルや良い情報を持ったユーザーの方々に活躍していただくことで、質の高いQ&A ができあがります。また、このような優れたユーザーの方々は、その貢献によって受け取れる、経験知識をお金に換えることができる仕組みを作っています。優れたユーザーの基準ですが、ログインの平均時間や平均回答時間など、非常に多くの指標を設定して評価しています。
オフィスでまず目に飛び込んでくるのは、ペットボトルで組み上げられたパーティション。さぞかし落ち着かない気がするが、「障子のように、人の気配は分かるけど姿ははっきり見えないので機能的」とのこと。
Q&A は検索を超えて世界平和を実現する
――創業のきっかけはなんでしょうか
●『グーグルを超える日』という本を出したのですが、このタイトルどう思いますか?
――非常に野心的ですばらしいと思いますが(笑)。
● このタイトルの意味は、Q&A のもたらす価値が検索を超えるのではないかというところから来ています。
僕は元々韓国籍で、帰化をしています。子どものころから、偏見だったり、理由もなく説明や主張が受け入れられないという理不尽なことを体験してきました。また、身体も弱かったので、かなり人生で悩んでいた時期がありました。そのときにインターネットに出会ったのですが、最初は良い体験ではありませんでした。話には、コンピュータに詳しいハッカーと呼ばれる人たちが、親切にいろいろと教えてくれるらしいぞと聞いていたので、期待していました。ところが、掲示板特有の排他的というか「質問する前に過去ログを全部読め!」みたいなことをいわれ、たたかれてしまったんです。そんな中で、人と人とが理解し合えるのかということを考えて、Q&A しかないという結論にたどり着きました。
『2010 年宇宙の旅』という映画で、宇宙船に米国とソ連の乗組員が乗り込んでいるときに、地球では両国が戦争を始めてしまいます。乗組員の間も一瞬険悪になるのですが、そこで1 人がこういいます。「戦争は戦争屋にまかせて、僕たちは今できることをやろう。僕は真理に達したいときは、質問をする、君は答えてくれる。それをやろうじゃないか?」
緊張状態にある両者がそれを解きほぐし、互いの理解を得るためにはQ&A という手法が有効なんだといっているのではないかと……。人間ってスタンドアローンじゃないですか。コンピュータならネットワークでつなげば通信できますが、人間は個々のOS が違うようなものですよね。それが互いに理解し合えると感じるのは、個々の違いを補足しながらコミュニケーションをしているからです。それは突き詰めるとQ & A なんですよ。Q&A を数多く交わしていけば、相互理解も深まって最終的には世界平和につながる。ちょっと飛躍しすぎですかね(笑)。
最初はインターネットを使っている人たちの間だけかもしれませんが、その数が増えていけば世界中の人々が理解し合える世界がくるはずだと、そう思ってQ&A コミュニティーを開設しました。
もちろん、それを実現するには食べていく必要もあるので、会社組織にし、企業のお客様を巻き込んで取り組んでいるといったところです。
本記事でも話に出た兼元社長の『グーグルを超える日』。OKWeb、そして兼元社長の波乱万丈人生に興味を持った方はぜひ読んでほしい。
社名の「OKWeb」は、世の中をよくするということで「OK」であるとともに、「Oshiete(教えて)、Kotaete(答えて)」の略でもあります。OKWeb に蓄積されたQ&A を「世界知識資産」と呼んでいますが、これは集まったQ&A を元にして、何倍にもその価値を高めていこうという意味です。そういう思いがありますので、ほかのサービスに負けるわけにはいきませんね。
インターネットもそろそろ「ただ楽しい」というものから、本当に役立つものに脱皮しなければいけない時期にあります。インターネットで流すべきものは愛です。IT はIT でも、愛(I)を送る(Transfer)ものであるべきだということです。
IT は、人類にとって原子力に匹敵するくらい強力なものだと思いますが、何を流すか、一緒に愛を流せるかということで変わってきます。ですから、OKWeb ではお礼をいうことを重要視しています。
1000 億円の利益を達成する」というものです。数字だけですとグーグルを超えてはいないのですが、世界をつなげる、世界の意識を変えるようなサイトになるのが目標ですから、そういう意味でグーグルを超えるということです。「2010 年」は映画からです。社員にもあの映画を観るように薦めていますが、「よく分からない」なんていう感想が多くて(笑)。
あと、「この質問を世界に聞く」という機能を実現すること。これが夢です。ボタンをクリックすると質問が同時翻訳されて世界中の人が見て、その答えが同時翻訳されて返ってくる。これは自分の視野に世界を置くということになると思うんです。今、多くの人が、自分の視野に世界を入れていない。世界に目を向けて、世界の人たちが何を知りたがっているのかとか、世界を身近に感じることが大事だと思います。
かなり高い目標のように見えますが、英語に対応させるだけでもかなりの国をカバーできると思っています。
――なるほど(笑)。ありがとうございました。
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