
10大キーワードで読む2025年のインターネット
01 エッジAI
02 AIデータセンター
03 SDV
04 越境EC
05 プラットフォーム規制
06 ダークパターン
07 防災DX
08 NTN(非地上系ネットワーク)
09 SNSとフェイク
10 グローバル・デジタル・コンパクト
(執筆協力/仲里 淳)
10大キーワードで読む2025年のインターネット
巻頭言「インターネットが私たちのグローバルなデジタル空間であるために」
江崎 浩●一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)理事長
第1部 テクノロジーとプラットフォーム
1-1 アプリケーションと開発
AIをめぐる技術と業界の動向
青山 祐輔●株式会社 企
AI開発競争が過熱するも、学習データの権利問題やリソースの確保など課題は多い。一方で効率化やエッジAIの開発、マルチモーダル化が進み、顧客対応や画像生成など多くの場面でAIが実用化されつつある。
活用が広がる都市デジタルツイン
片岡 義明●フリーランスライター
現実世界の都市情報をデジタル空間上に再現し、シミュレーションや分析を行う“都市デジタルツイン”。そのデジタルインフラとなる3D都市モデルや点群データの整備が進み、活用が広がっている。
アクセシビリティと共生の技術
仲里 淳●フリーランスライター/インプレス・サステナブルラボ研究員
障害者差別解消法の改正をきっかけにアクセシビリティへの理解と意識が高まる。スマホは障害当事者にとって標準のアシスティブ機器となり、AIの革新的な発展でこれまでにない高度な支援が可能になる。
1-2 クラウドとモビリティ
クラウドサービス市場の動向
林 雅之●国際大学GLOCOM 客員研究員(NTTコミュニケーションズ株式会社 勤務)
国内企業は「2025年の壁」を迎え、自治体でもシステム移行に課題が多い。高度なプライベートサービスや域内データ保護を意識したソブリンクラウドも需要が高いが、世界のシェアは依然として海外3強に集中。
SDV:モビリティと社会の未来のカタチ
佐藤 雅明●東海大学 観光学部 准教授
自動車製造の主軸がソフトウエア視点での設計へと変化している。自動運転技術により、自動車には高い安全性と共に人とのコミュニケーションが求められ、モビリティはインフラとして新しい社会を支えていく
1-3 通信サービス
国内通信事業者の動向
天野 浩徳●株式会社MCA 通信アナリスト
NTT法見直しが進む中、携帯各社は「ポイ活」普及による収益拡大を目指す。5Gネットワークの競争が激化する一方で、付加価値領域の拡大で顧客基盤を強化。StarlinkなどNTN利用の動きも進む。
第2部 デジタルエコノミーとビジネストレンド
2-1 コマースと金融
Eコマースの最新動向
田中 秀樹●株式会社富士通フューチャースタディーズ・センター 業務部門 部長
Eコマース市場はリアル回帰の反動減が落ち着き緩やかに拡大している。一方、物流2024年問題が現実となりECサイトの改ざんも多発した。効率化と価値向上に向けたAI活用も重要テーマとなっている。
決済プラットフォームの動向
多田羅 政和●株式会社電子決済研究所 代表取締役社長/電子決済マガジン編集長
賃金のデジタル払いがスタートし、資金移動業者が参入。労働者や企業にメリットを出せるかが鍵となる。アップルのNFC開放による可能性、「パスキー」の躍進によるオンライン認証の今後にも注目が集まる。
2024年の暗号資産の動向
岩下 直行●京都大学公共政策大学院 教授
米国でのETF解禁と政権交代により、ビットコイン相場は10万ドルを突破し、史上最高値を更新。日本でも若い世代を中心に投資が拡大。一方、不正利用や環境負荷の課題は深刻化し、対策が急務となっている。
2-2 デジタルコンテンツとメディア
2024年のテレビとインターネットの動き
倉又 俊夫●日本放送協会 メディア総局メディアイノベーションセンター チーフ・ディレクター
災害や選挙、そしてオリンピックという大きな出来事でインターネット配信が改めて注目された。終了するチャンネルや事業の可否が裁判になるサービスも出ているが、好調を維持するメディア事業者も多い。
デジタル音楽の最新動向
荒川 祐二●株式会社NexTone 代表取締役COO
音楽活動における生成AIの活用は、新たなクリエーティビティを生み出している。ストリーミングが支える市場の伸びも順調だ。一方、AIにまつわるアーティストの権利侵害にはまだ根本的な解決策が見えない。
国内オンラインゲーム市場の動向
澤 紫臣●アマツ株式会社 チーフクリエイティブオフィサー
下降トレンドにあるオンラインゲーム市場。メタバース、ブロックチェーン、生成AIといった比較的新しい技術や概念は、果たしてゲームの発展に寄与できているのだろうか。市場動向と事例とともに追う。
2-3 デジタル広告
国内インターネット広告市場の動向
橋本 貴央●みずほ銀行 産業調査部 インダストリーアナリスト
インターネット広告市場の拡大は継続。消費者のメディア接触行動は引き続きスマートフォン中心となり、縦型動画が2025年以降も成長ドライバーとなる見込みだ。生成AIを利用したサービス拡大にも期待。
第3部 インターネットと社会制度
3-1 法律と政策
インターネット関連法律の全体動向
岡村 久道●弁護士/京都大学大学院 医学研究科 講師/国立情報学研究所 客員教授
「情報流通プラットフォーム対処法(旧・プロバイダ責任制限法)」など重要法制の改正が行われたほか、「スマホソフトウェア競争促進法」が成立。通信への影響が大きい「NTT法」改正議論は2025年も続く。
インターネットと公職選挙法
岡村 久道●弁護士/京都大学大学院 医学研究科 講師/国立情報学研究所 客員教授
“解禁”から10年余り、社会に根付いたネット選挙運動だが、SNSの影響力の拡大や技術の進化により、想定していなかった課題が浮上している。見直すべき点は何か、いま立ち止まって考える必要がある。
デジタルプラットフォームをめぐる課題と規制の動き
寺田 眞治●一般財団法人日本情報経済社会推進協会 客員研究員
安全保障の視点からEUではIoTを対象にしたサイバーレジリエンス法、米国ではTikTok禁止法が成立。公正な市場競争の観点では米国で反トラスト法違反の指摘が続き、日本ではスマホ新法が制定。
プライバシー保護をめぐる日米欧の制度面の動向
寺田 眞治●一般財団法人日本情報経済社会推進協会 客員研究員
日本では個人情報保護制度の在り方が転換期に、世界では子どものプライバシー保護規制強化や各国共通の認証制度に向けた議論が進行。国境を越えたデータ流通に向けグローバルな調和が求められる。
AIガバナンスの動向
三部 裕幸●弁護士・ニューヨーク州弁護士/大阪大学 招聘教授(社会技術共創研究センター)
世界中でAI法制度に向けた動きが急進展している。日本でもAI基本法案が検討されているが、以前から議論はソフトロー偏重だ。企業は、AI開発・利活用の「4つのリスク」への自主対策が不可欠だ。
AIガバナンスの動向
3-2 市民と教育
2024年の災害とインターネット
佐藤 大●一般社団法人情報支援レスキュー隊(IT DART) 代表理事/東北医科薬科大学病院
甚大な被害をもたらした能登半島地震では広域避難も実施され、官民の多様な情報支援が必要とされた。阪神・淡路大震災から30年を経て、インターネットによる災害対応は迅速さと効率化がさらに求められる。
Next GIGAスクール構想に向けた課題と展望
関島 章江●株式会社電通総研
GIGAスクール構想第2期がスタートした。統合型校務システムとデータ利活用、生成AI導入に向けて自治体の動きが加速している。学力調査CBT開始には学校ネットワークの帯域不足が最大課題となっている。
ライドシェアとマイクロモビリティの現状と課題
白石 隼人●株式会社YCP Japan パートナー
2024年4月に始まった日本版ライドシェア。都市部では新サービスとして定着してきた感もある。電動キックボードなどマイクロモビリティのシェアリングも含め新しい移動手段のもたらす効果が注目される。
eスポーツの現在地と社会課題の解決
澤 紫臣●自治体顧問/eスポーツアドバイザー
eスポーツは認知度の伸びとともに福祉・教育・国際交流など広く活用され始めた。今後はゲームの枠を超え人々の生活を豊かにするツールとして多様な社会課題の解決に役立てられるよう取り組む必要がある。
第4部 サイバーセキュリティとインターネットガバナンス
4-1 サイバーセキュリティ
2024年の情報セキュリティ動向
藤堂 伸勝●一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC) 早期警戒グループ 脅威アナリスト
正規ツールを使用して長期間の潜在をもくろんだ高度なサイバー攻撃が見つかった。また、複数の法執行機関による共同捜査でランサムウエア攻撃グループを摘発するも、ランサムウエア被害が続いた。
フィッシング詐欺被害の現状と対策
加藤 孝浩●フィッシング対策協議会 運営委員長
2024年はフィッシング詐欺報告件数の増加に加え、新たな手口の拡大によってインターネットバンキングに係る不正送金被害も増加。ウェブサービス側の認証強化となりすましメール対策が急務。
「選挙」「地震」氾濫する偽・誤情報
平 和博●桜美林大学 教授
「選挙イヤー」の2024年は、生成AIの普及と相まって、空前の偽・誤情報の氾濫に見舞われた。選挙を標的に分断を増幅する一方、能登半島地震などの非常事態を巡っても混乱に拍車をかけた。
人類総メディア時代の誹謗中傷問題
山口 真一●国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM) 准教授
ネット空間で注目を集めるほど経済効果を上げるアテンション・エコノミーがSNSの発信を過激化し、容易に誹謗中傷を生む構造が形成されている。その代償は人々の心や命、民主主義そのものにまで及んでいる。
4-2 トラフィックと通信インフラ
5G/Beyond 5G(6G)をめぐる周波数政策の動向
飯塚 留美●一般財団法人マルチメディア振興センター 調査研究部 研究主幹
アジア太平洋、北米に続き、欧州、中東、アフリカで5G SAネットワークへの投資が増加。5Gは世界人口の40%をカバー。6GではIMT-2030帯域の検討が開始、既存サービスとの周波数共用にも注目。
空のインフラ──成層圏と低軌道衛星インターネットの動向
湧川 隆次●慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート(KGRI) 特任教授
低軌道衛星はブロードバンド回線からモバイルダイレクトが開始される次なるステージへ。HAPSは各社商用化を目指した動きが進み競争が本格化。6Gに向けて空のインフラは大きな役割を担うことになる。
インターネットトラフィックの動向
長 健二朗●株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)
福田 健介●国立情報学研究所
2024年のインターネットトラフィックは、全体的に堅調な増加。インターネットが生活に浸透したことにより、中期的には確実に拡大しており、当面は10〜20%程度の成長が続くと思われる。
国内データセンターサービスの動向
三柳 英樹●株式会社インプレス クラウド&データセンター完全ガイド 編集長/クラウドWatch 記者
AI用途の拡大から高消費電力、高発熱のGPUサーバーに対応するため、水冷技術の発表が相次いだが、規模はまだ小さい。市場全体ではハイパースケーラー向けデータセンターの建設がまだ続いている。
4-3 インターネット基盤
ドメイン名の動向
横井 裕一●株式会社日本レジストリサービス(JPRS) 広報宣伝室 室長
全世界のドメイン名登録数は約3億6230万件となり、JPドメイン名の登録数は177万件を超えている。新gTLDの次回募集の申請受け付けは、2026年4月に始まる見込みである
IPアドレス利用の動向
川端 宏生●一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC) IP事業部
IPv4アドレス、IPv6アドレスともに、新興国を中心とした需要に支えられ、分配件数は堅調な推移を見せる。IPv6への対応は進むが、今後も注視が必要な状況は続く。
DNSの動向
森下 泰宏●株式会社日本レジストリサービス(JPRS) 技術広報担当・技術研修センター
DNSSECの仕組みを利用した攻撃手法「KeyTrap」が発表され、対応が進められた。ICANNがプライベート利用のためのTLD「.internal」の予約と、2回目のルートゾーンKSKロールオーバーの作業日程を発表。
デジタルとAIガバナンスの包括的な枠組み「グローバル・デジタル・コンパクト」
木下 剛●一般財団法人インターネット協会 副理事長
「未来のための協定」の付属書であるグローバル・デジタル・コンパクト。インターネットが発達した社会で人権や安全保障等の国際協力を推進し、人間中心のデジタルの未来を掲げSDGsの達成に寄与する。
インターネットガバナンスの動向
前村 昌紀●一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC) 政策主幹
AFRINICの混乱は一段落し、新たな一歩が踏み出された。GDCをはじめとする国際的なインターネット政策の議論には、当事者関与の原点に戻る真のマルチステークホルダー主義が不可欠。
第5部 インターネット関連資料
5-1 国内インターネット普及資料
5-2 デジタルコンテンツ資料
5-3 IoTその他の資料
5-4 世界のインターネット普及資料
付録 インターネットの主な出来事 2024
インターネットの主な出来事 2024
「インターネット白書」について
「インターネット白書」は1996年の創刊以来、日本のインターネットの成長や変化を毎年まとめてきたインターネットの書籍年鑑です。内容構成にあたっては、一般財団法人インターネット協会監修のもと専門家による寄稿と、市場動向調査により構成されてきました。現在は、一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)、株式会社日本レジストリサービス(JPRS)も加わり、3団体の協力のもと、「The Internet for Everything」というキャッチフレーズを掲げて、より広範なインターネットの可能性をレポートしています。