インターネットマガジン バックナンバー

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※この記事は『インターネットマガジン2005年11月号』に掲載されたものです。文中に出てくる社名、サービス名、その他の情報は当時のものです。

 

[日本の注目ベンチャー企業]

 

情報発信能力の低い
日本の企業にネットPRを提供

インターネットの普及によって、いまやIT系に限らず多くの企業が、自社の製品やIR、求人情報などを、ネットを使って発信している。ただし、本当にネットを活かした情報発信にはノウハウも必要とされるが、そんな企業のネットPRを支援するのがNews2uだ。「難しいことをやさしく伝える」がモットーの同社代表取締役社長 神原弥奈子氏に、起業のきっかけや将来の展望について伺った。

文:仲里 淳(編集部)
写真:島津 隆雄

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株式会社ニューズ・ツー・ユーのプロフィール

 

  • 所在地 東京都千代田区一番町
  • 設立年月 2001年3月(株式会社カプスとして1993年に創業)
  • 代表取締役名 神原 弥奈子(かんばら みなこ)
  • 社員数 約40名(2005年9月現在)
  • ウェブ http://www.news2u.co.jp/
  • 事業内容 インターネットビジネス支援全般

企業が発信するリリースには
コンテンツとしての価値がある

―― 取り組んでいる事業の概要をご説明いただけますか。

ネットPRというもので、企業が出すニュースリリースを集め、当社が運営するリリースポータルサイト「News2u.net」に掲載すると同時に、ライブドアやgooなど、一般向けのポータルサイトなどにコンテンツとして提供しています。そのほか、オプションのサービスとして、メディアへのニュースリリースの配信や、ニュースリリースの代筆なども行っています。基本的には、ネットのコンテンツとしてニュースリリースをクローズアップしていくところが特徴です。

―― 企業は、新製品やサービスを出すときにニュースリリースを渡して、それを「News2u.net」も含めた適切なメディアに提供していくというものですね。

そうです。現在、約600社の企業に会員登録いただいており、約7000本のニュースリリースがアーカイブされています。
コンテンツは、時系列順、業種別、情報カテゴリー別、企業別等、カテゴリー別に閲覧、検索することができます。例えばIT系のメディア向けにニュースリリースを出す場合は、フラグを立てることでITという情報カテゴリーに振り分けられます。フラグは企業側が自分で設定します。
また、上場企業の情報だけを検索することもできます。ニュースリリースそのものをいろいろな切り口で利用できるサービスだと思います。
他にも、News2uの前身となるカプスの主要事業であるウェブの製作も行っています。
ウェブの目的は、情報をステークホルダーに届けると同時に新たな集客をすることです。そのためには常に新しいコンテンツがないといけないのですが、その部分になかなか手が回らず、立ち上げたままでほったらかしてしまうケースが少なくありません。私たちがこの事業を始めたきっかけは、企業サイトで最も更新すべきところ、つまり「What’s New」をうまく伝えていけるようにサポートしようと思ったからです。
What’s Newというのは何かが変わったということですから、企業にとってはニュースなわけですよね。ところが今までの発想では、プレスリリースとして発表するものは、プレスにとって価値がある内容じゃないと書いちゃいけないという意識があったと思うんです。それは、プレスが対象読者に価値ある情報を届けるというマスコミとしての使命があったからだと思いますが、インターネットになるとネット上のあらゆるステークホルダーが企業サイトに来てくれます。その企業に関心を持っている人にとっては、マスコミに報じられなくても知りたい情報があると考えています。
What’s Newってことは、つまりニュースなんですね。さらに、企業のサイトまで来てWhat’s Newを読む人ならその会社を知ってるからいいんですけど、知らない人に対しては、ニュースリリースという形で会社の現在の事業展開や展望といった情報をお伝えする必要があります。



News2u.netでは、企業のリリースが業種やカテゴリーごとに整理されているほか、さまざま企業の社長ブログやネットPR関連の情報がまとめられている。
http://www.news2u.net/

―― ご自身の著書『勝つためのインターネットPR術』にもありますが、リリースだけではなく企業がPRしていくために、インターネット時代に適したコンサルティングみたいなこともされているようですが。

日本企業は、情報発信能力が非常に低いと思います。情報発信していくニーズが今までなかったからだと思います。やはりBtoCとかでマスに対してやっていくものは、商品の流通量がある一定規模ないといけませんし、ある程度の規模の会社じゃないとできなかったということもあったと思います。それに対し、インターネットは距離や時間を越えられるだけでなく、物質的な量の部分でも規模に合わせた展開ができます。企業ウェブサイトをどのように活用していくか考えたとき、どのように情報発信していくか、自社の中にある情報とは何か、ニュースとは何かというのを見つけるところから入り、サイトの構成を考えますので、コンサルティングがメインになります。
一般的に企業サイトというのは投資家向け、お客様向け、学生向けなどといったように、ターゲットごとに分けて作られることが多いと思うんですが、それをもう一度考え直して、サイトのコンテンツとして更新頻度の高いものはどこか、どこにニュースがあるのかっていう視点で見ると、ウェブサイトの作りもまた変わってきます。

―― 企業の情報を発信していく上で、ブログというのが強力なツールになるともおっしゃっていますが、ビジネスブログのようなものはどう考えていますか?


神原社長がネットPRの極意を記した『勝つためのインターネットPR術』は、ライブドア堀江社長との共著。平易な文章で書かれているのでこれから始める社長さんにもお薦め。

ブログでサイトを構築するという発想は、実は私はあまり持っていません。なぜかというと情報をいつも更新できる企業は少ないからです。全面的にブログを導入してサイトを作るのも否定はしませんが、実際にそれが有用な企業とそうでない企業があると思います。企業のブランディングとか方向性によって、有用なツールというのは変わってきますから。
私たちは、日本の情報発信能力が低い原因は、社長のコミュニケーションリテラシーに問題があると思っています。メディア嫌いだとか、ご自身で説明するのが苦手とか。そこで、社長にとってのリハビリツールみたいな感じで、自分の考えをまとめるツールとして活用し、リアルでも実践しやすくなりますので、社長ブログをお勧めしています。
また、これからブログを書くユーザーはさらに増えることが予想されますから、情報ソースも必要になります。その時に、企業のニュースリリースはすごく重要になると思っています。雑誌など、メディアを通じた情報は記者の二番煎じになってしまうので、ブログを書いている人たちにとって面白くない。これから日本にきちんとしたブロガーが出てくるとしたら、生情報から自分なりの意見や見解をゼロから書ける人だと思います。その時の元になる生情報って、ニュースリリースじゃないでしょうか。

―― ブログについて技術的な話題として、RSSなどが取り上げられていますね?

これは私自身の反省も含めてなんですが、今回本の原稿を書いてみて分かったことは、この業界が持っているオタク度、専門性の高さとか業界内だけでのコミュニティーの深さを改めて感じましたね。私自身も凄く楽しかったので、どっぷり浸かっていたのが分からなかった。ですから、顧客本位ではなく、世間の半歩先どころか2歩先を行っていた。振り向くと後ろに顧客がいなかったということです。
一般の方にRSSそのものがどういうふうに認識されているのかとか、リーダーを使っている人がどれくらいいるのかとか。
今ではその経験を元に、新しいものだけを追い求めるのではなく、ユーザー本位で考えるように努めています。
最近のネットユーザーと、以前からネットにいる人たちとの間のリテラシーとか認識の違い。ITによるデジタルデバイドって大きいんですよ。ブロードバンドが来てないとか、インターネットが使えないということではなくて、情報を処理する部分のデジタルデバイドが大きくなっていて、異業種からの中途採用のスタッフの中にはとまどいもあるようですね。1日に何百通も来るメールのフィルタのかけ方とか処理するスピードとか。「メールって全部見なきゃいけないんですか?」って。
一部の新しもの好きな人たちが面白いねっていっていることを通訳する世代や、そういうビジネスが必要かもしれない。橋渡しっていうと僭越なんですけど、私はそこに不安を持ったので、そういうツールとして「News2u.net」を立ち上げました。


チーム単位でゆるやかに区切られたデスク。パーティションが低いので、スタッフ同士のコミュニケーションがとりやすい。社長室はガラス張りで、いつでもフロアを見渡せる(右上)。ブルーの柱は、会社のイメージカラーに合わせて色を塗ったとのこと。

―― 本を出したことで講演の機会が増えたようですが、聴講者はどういった方が多いんですか?

あまりIT系ではないんですよね。IT系というよりも、企業の社長。今は、ITというよりは実業の方々とコミュニケーションを取りたいなと思っています。まだまだITに対して食わず嫌いな人が多いんですよね。そういう人にインターネットって簡単なんですよといったり、「やってないとやばいですよ」って脅したり、日によって違いますけど(笑)。
分かりやすく伝えるために、私も今言葉の練習をすごくしています。「ホームページ」って陳腐な感じがしてすごくいいたくない自分があったんですけど、「ウェブサイト」っていっただけで聴衆は、「また難しいカタカナが出てきた」って引いちゃうわけです。業界そのものの問題だと思うんですけど、「この言葉知ってますか? ああ知らなくてもいいんですよ」っていう話に持っていけるような形でお話するようにしています。
最近は自然に「ホームページ」って出てくるようになりましたけど、たまに「またウェブサイトっていっちゃった。減点1」みたいな感じでやっています(笑)。

―― 今後の展開や将来の夢は?

私自身、インターネットと共に成長してきと思っているので、いつもネットでドキドキワクワクしていたいんですね。そういう意味では、News2u.netというサービスを自分で産み出して運営していて、これからはNews2u.netがインターネットユーザーと一緒に成長していく、これからどう育っていくのかなぁっていうのがすごく楽しみで、自分自身がこのサービスに夢中ですね。
1年前といっていることが変わったとか、朝令暮改っていうのは会社の中ではよくあって、ユーザーの使い方が変わってきてるんだからそれに合わせてどんどん変わっていけばいいんじゃないかというスタンスで、これからもインターネットやNews2u.netと接していきたいなと思っています。

―― ありがとうございました。

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Web担当者Forumでは、神原弥奈子氏による企業広報担当者へのインタビュー「PR 2.0の現場から ネットPR時代を生きる広報&マーケティングパーソンへ」を連載中です。

 

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