インターネットマガジン バックナンバー

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※この記事は『インターネットマガジン2004年7月号』に掲載されたものです。文中に出てくる社名、サービス名、その他の情報は当時のものです。

 

地方で創業した小さな会社が日本のインターネットをおもしろくする!

ロリポップ/株式会社paperboy&co.代表 家入 一真
はてな/株式会社はてな代表 近藤 淳也

低価格な若年層向けレンタルサーバー「ロリポップ」や無料ブログサービス「JUGEM」の株式会社paperboy&co.と、Q&Aサービス「人力検索はてな」や無料日記サービス「はてなダイアリー」の株式会社はてなは、どちらも地方で創業した小規模な会社だが、多くのユーザーの支持を集めている。

家入一真氏と近藤淳也氏

取材・文:宮脇淳
撮影:渡徳博

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東京に来た理由は
……変人が多いから?

――paperboy&co.は福岡が、はてなは京都が本拠地でしたが、この春東京に進出されました。その理由は?

近藤 うーん、特に何かがあるからというわけではなくて、まあ直感で(笑)。創業してちょうど3年経ちましたが、地元で続けるのも1つの手だけど、東京に出てきて何かやれれば、と思って。
家入 うちも今年3年目で、今回GMOとの資本提携の話があったのも東京に来た理由の1つなんですが、そもそも福岡はIT関連企業がほとんどないんですよ。だから、寂しかった……(笑)。すごく置いてけぼり感があったんです。あと、東京は変人がものすごく多くて楽しいです。
近藤 それはありますね(笑)。ただ、僕の場合、京都の街はすごく好きなんです。みんな東京で就職してしまうんですけど、もっと京都にいっぱい若い人が残って、シリコンバレーとまでは言わないまでも、もっと賑わいがあればといつも思っているんですけど現状はいかんともしがたくて。
家入 僕は、福岡にはぜんぜん愛着がないなぁ。
近藤 えっ、ないんですか?(笑)
家入 好きでも嫌いでもないんですよ。レンタルサーバー屋は、ネットさえつなげられればどこでもできますから。福岡だからできたことっていうのも特にないしなぁ……。立ち上げ当初、お客さん用のプレゼントで博多ラーメンを贈ったぐらいですかね。
近藤 うちは逆に、京都にいたからいまがあると思っています。「はてな」以外では、事業の両輪として受託開発をやっているんですけど、地方だからある程度仕事量が抑えられて、自社開発の時間が取れた部分もありますから。いまおもしろいサイトって、地方から出てきていると思うんですよ。もし東京で創業していたら、日銭になる開発の仕事をいっぱい受注しちゃって、いまごろ「はてな」はこの世になかったかもしれません。

家入一真氏

近藤 家入さんって、社員をぜんぜん怒らないんですか? 「いつも社員に叱られてます」って自分のブログに書いていましたけど。
家入 ぜんぜん怒らないですね。デザインが良くないと細かい注文を付けますが。近藤さんは社員を怒るんですか?
近藤 抑えなきゃいけないときもあれば、言わなきゃいけないときもあるってとこですかね。家入さんはその辺がいわゆるワンマン経営者と違っておもしろいんですよね。いいリーダーだなと思って尊敬しています。
家入 いやいや、気が弱いだけですよ。怒ったら社員に逃げられるんじゃないかって(笑)。近藤さんは社員とケンカします?
近藤 ケンカとまでは言わないですけど……うちは社員が5人だから、オフィスで何かボソっと言えば全員に聞こえますからね。そんな規模ですから、企業のマネジメントには縁遠い世界ですよ。
家入 心地いいですよね。誰かが言っていることをみんなが聞いていて、誰かが考えていることをみんなわかっている状況っていうのは。
近藤 たとえば、「はてな」で何か揉めごとが起こると「何だ~」って感じでみんな集まってきて、そこでいきなり全社会議が始まったり(笑)。paperboy&co.は社員が30人近くいるから、まとめるのが大変じゃないですか?
家入 それは経営者としての資質不足というか、リーダーシップがとれないのを痛感してますね。ある程度、こう社員に夢を見させて引っ張っていくのって大事じゃないですか。
近藤 じゃあ、これからもっとそういう資質を磨いていこうと思うのか、あるいは力のある経営者をどこかから呼んできたほうがいいのか、迷いはないですか?
家入 それは一時期すごく考えましたね。ただ、社員で飲み会するとき、最近はお酒を飲めるようになってきたんですが、いままでぜんぜん飲めなかったから、僕はいつも端っこのほうで1人でタバコを吸っていたんですよ。誰も僕に話しかけてくれないし(笑)。で、まあ1人だと暇なんで、みんながワイワイ楽しんでいる顔を傍からずっと眺めているわけですよ。そんなとき、ふと「会社やっててよかったなぁ」って思うんです。
近藤 へぇ。なんかそれ、いいですね。
家入 自分より年上のオッサンとかもいるんですけど、そのときだけは自分の子供のような感覚で見ていますね。普段は敬語で話しかけるんですけど(笑)。

家入一真氏と近藤淳也氏

――ブログをはじめ、ネットのサービス=無料という風潮は根強くあると思います。経営者として、サービスの有料・無料について、どういう考えを持っていますか?
家入 僕、無料サービスって好きじゃないんで、あちこち見ては「ここ、いつか潰れるぞぉ~」なんて余計なことを考えちゃうんですけど(笑)。JUGEMにしても、結局はロリポップがあるからサービスインしただけなので、無料サービスをガンガンやっている会社はすごく不思議です。「どうやって儲けているんだろ?」って。
近藤 日本のブログを無料にしてしまったのはうちのせいかなぁ、と若干の責任を感じています(笑)。「人力検索サイトはてな」はポイント制の有料サービスだけどそんなに儲かっていないし、やっぱりポッと出のベンチャーが有料サイトの運営だけで回すというのは資金的にも難しい。だから、無料で良質のコミュニティーをそこにくっつけてこそうまく回るのかなという考えを持つようになって、「はてなアンテナ」や「はてなダイアリー」をつくったんです。もちろん、「こういうアイデアを世に出したい!」という気持ちがいつも先にあるんですけどね。
家入 ああ、そういうのは「はてな」からすごく感じますね。僕は新しいアイデアがぜんぜんないからなぁ。「ムームードメイン」なんて、元々あるビジネスモデルを使って単純にターゲット層を変えただけだし、ブログも後発だし。
近藤 でも、「ロリポップ」は付加価値があるから、あれだけ売れているわけじゃないですか。ユーザーをひきつけるポイントって何だと思いますか?
家入 最初は、サーバー管理もサポートも入金も僕1人でやれていたんですけど、会員数がどんどん増えてぜんぜん回らなくなったんです。これじゃいけないってことで、アルバイトを2~3人入れたんです。そのとき、サポートの重要性に気づいて、いまはかなりサポートに力を入れているので、お客さんからも感謝いただけるようになったって感じですかね。

家入一真氏

近藤 ユーザーに支持されるためには、やっぱりユーザーの声を聞いて、ユーザーの視点をきちんと保って、システムのどこをどう改善すればいいのか、頭のなかですぐ浮かべるというのは大事ですよね。あと、会社にしてもサービスにしても、何か一本線を通さないと、雑多なものの集まりになるから、その辺のコントロールもきっちりする必要がありますし。
家入 それ、同感です。社員が勝手にサイトのデザインとかリニューアルしちゃうと、ぜんぜん僕の求めているものと違うものになっちゃう。
近藤 たとえば、六本木ヒルズをどうやってつくったのか、僕はとても興味があるんですよ。全体的にある程度イメージが統一されているわけですが、遠くから眺めた姿と、玄関に入って柱を1本見たときに、「いったいどうやって同じイメージをコントロールしてあんなでかいものをつくったんだろう?」 って。
家入 それはつまり、「はてな」というサービスのなかに何十種類ものサービスが入るような規模になったとき、どうやってつくればいいのかってことですか?
近藤 そうなんです。そういう方法論って、建築なら建築学という学問として体系づけられているんですけど、ソフトウェアにはそれがなさすぎるじゃないですか。昨年使っていたものが今年は使えませんという環境のなかで、そういった体系をつくる暇がないと思うんですよ。
家入 一本線を通すには、自分の下に第二第三の近藤さんをつくっていかなきゃいけないんでしょうね。
近藤 まあ、現状では社内の見通しがいいので問題ないんですけどね。「はてなダイアリー」では、「はてなダイアリーの要望」ってキーワードで利用者からの書き込みを拾っているんですが、βテストのときはこれを見つけ次第すぐ改善していたんです。すると、さっき要望を出した人がまだその辺でウロウロしていて、「もう直したのかよ!」って驚かれる(笑)。僕は利用者のそんなリアクションを見るのが楽しいし、そういう部分があるからこそ、初期からのユーザーさんは「はてな」を好きでいてくれているんじゃないかな、と思っています。
家入 「はてな」はそういうコミュニティーがうまく形成されているから、それこそソーシャルネットワーキング(SNS)みたいなのをツッコんでも回るんじゃないでしょうか。ただのSNSよりも、もっとすごいおもしろいものができそう。それっぽいのをやるんでしょ? 「顔出しはてな」とか。
近藤 いやいやいや(苦笑)。これからも「ああ、そう来たか」と思われるものを出したいし、そういうのを期待されていると思っていますから……まあ、お楽しみにということで(笑)。

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近藤淳也氏

家入 一真(いえいり かずま)
1978年12月28日福岡県出身。高校中退後、油絵の専門学校へ。デザイン事務所を経て独立し、paperboy&co.を設立。レンタルサーバー「ロリポップ」、オリジナルドメイン取得サービス「ムームードメイン」など、主に女性をターゲットにしたサービスを展開。安定した回線、充実のサポートで利用者から支持されている。また、今年2月には、無料ブログサービス「JUGEM」をスタートさせ、好評を得ている。

飲み会で社員がワイワイ楽んでいる顔を傍から眺めているとき、ふと「会社やっててよかったなぁ」って思うんです。

近藤 淳也氏

近藤 淳也(こんどう じゅんや)
1975年11月2日三重県出身。京都大学サイクリング部在籍中には、日本縦断・北米大陸横断など、ツーリング活動を展開。株式会社はてなは、有料Q&Aサービス「人力検索サイトはてな」、無料アンテナサービス「はてなアンテナ」、無料ブログ「はてなダイアリー」など、ユニークなサービスを開発・運営している。

「はてな」でユーザーからの要望を見つけたら、すぐプログラムを改善して「もう直したのかよ!」って驚かせるのが楽しいんです。