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CONTEXT

2007年11月13日、ジャスダックの新市場「NEO(ネオ)」がスタート。その記念すべき上場第1号となったのが株式会社ユビキタスというベンチャー企業だ。

2007年7月15日の時点で国内累計販売台数1800万台を突破した(エンターブレインによる調査)ニンテンドーDS(Liteを含む)は、いまや単なる携帯ゲーム機の域を超えてデジタルコンテンツのプラットフォームとしても注目されている。ユビキタスは、そのニンテンドーDS向けにネットワークOSを提供している。

初値は公開価格の4倍となる40万円を付けるなど期待は高いが、そんな同社に秘められた可能性とは何か。それを知る手がかりの1つとして、インターネットマガジンが2006年に行ったインタビュー記事を掲載する。

※この記事は『インターネットマガジン2006年4月号』に掲載されたものです。文中に出てくる社名、サービス名、その他の情報は当時のものです。

世界最小、最軽量、最速のネットワークOSで
ユビキタス社会を実現する!

「ユビキタス」という言葉は、いまや政府のIT計画にも登場し、将来のIT社会像を表すものとして使われている。「どこにでも存在する」という意味を持つこの言葉を社名にしたのが、株式会社ユビキタスだ。極小サイズのネットワークOSを開発して普及させることで、ユビキタス社会の実現に貢献していくという。同社のCTOであり、開発の中心的存在でもある鈴木仁志専務取締役に、起業のきっかけや将来の展望について伺った。

文:仲里 淳(編集部)
写真:渡 徳博

株式会社ユビキタスのプロフィール
  • 所在地 東京都新宿区西新宿
  • 設立年月 2001年5月7日
  • 代表取締役社長 中山 佳久(なかやま よしひさ)
  • 社員数 12名(2006年2月現在)
  • ウェブ http://www.ubiquitous.co.jp/
  • 事業内容 ユビキタスネットワークの促進に向けた、世界最小・最軽量・最速の組み込ソフトウェア、ネットワークOSの開発など

世界最小、最軽量、最速の
ネットワークOSを開発

―― 取り組んでいる事業の概要をご説明いただけますか。

●鈴木 ubiquitous TCP/IP-OSというネットワークOSを開発して提供しています。これは、実用に堪えるTCP/IPのプロトコルスタックを、可能な限り小さなソースで実現しようというものです。

TCP/IPの通信を実現するためだけにカーネルを設計して、その上でTCP/IPのプロトコルスタックを動かすということをしています。

実際に使われているものでは、たとえば東芝のウェブカメラなどがあります。また、住宅設備やインテリジェントビルといった、いわゆる高層ビルでのセンサーネットワークや制御系などのインフラとして使われています。電灯やエアコンの制御で、30階の電球が切れたらIPネットワーク経由でアラートを発生させるといったことですね。

また、エンターテインメント系としてニンテンドーDSにも採用されています。弊社のお客様は家電メーカーが多いのでAV機器などもありますが、DLNAにも対応しているということで採用されています。DLNAに対応している各社のプラズマTV、液晶、DVDレコーダーなどです。いろいろなものがあるんですが、今はそれらがIPネットワークに接続していこうという状況ですので、それに向けた製品を広く対象としています。


ユビキタスの通信プロトコルスタックが搭載されているニンテンドーDS。SSLなどの機能も実現されている。

―― 世界最小、最軽量、最速のネットワークOSと謳われていますが、これはどういった利点があるのでしょうか。

わかりやすくいうと、メモリーの容量が少ない環境でも、ネットワーク機能を実現できるということです。それは、同じことをやるのに、より安いハードウェアで済むということです。ハードウェアのコストというのはどんどん下がっています。1万円のコストがかかったものが、1000円でできるようになりました。同じく、昔は1000円でできていたものは、今はさらに安くなっているわけです。常にそういうコストの差というものは存在します。それを考えると、小さなリソースでしかも安いハードウェアでもネットワーク機能を付加できる、実現できるというのは意味のあることだと信じてやっています。

Linuxが動くハードウェアもどんどん安くなっていますが、常にそれよりも安いことに意味のある分野というのは存在するわけです。そこをターゲットにしていこうという感じですかね。

世界一を実現できたのは
ゼロから開発したおかげ

―― 世界一小さいということですが、それを実現するための特殊な技術や画期的なノウハウがあったのでしょうか。

まったくゼロから書き始めたということでしょうか。とにかくネットワーク機能を実現するということしかターゲットにしていなかったわけです。派手なGUIだとか、どんなウェブページでも表示できるブラウザーの機能などは考えませんでした。とにかくネットワーク機能を実現したかったので、そのための最小限のカーネル機能というのはどういうものなのかと考えていった結果、余計なものは何も付けなかったということです。

―― 小さくて軽いので、ハードウェアリソースも小さくできるということですが、物理的なサイズを小さくできるというメリットもありますよね。

例としてわかりやすいものだと、ニンテンドーDSがあります。ゲーム機というのは限られたハードウェア仕様なので、使えるCPUやメモリーリソースも限られてきます。じゃあどうすればそこに収められるかという話になりますが、パフォーマンス面、プログラムのサイズにおいても、それをクリアできました。ゲーム機ですから、ゲームに最大限のリソースを確保しなければいけません。ネットワーク機能を入れたら、ゲームのための容量が足りなくなったというのでは本末転倒で、たくさんのリソースを残せるからわれわれの製品を気に入ってもらえたということですね。