最新刊「インターネット白書2024」
AI化する社会のデータガバナンス

最新刊の2024年版では、生成AIの浸透による各分野への影響に着目。偽情報の問題、プラットフォームやコンテンツ業界の変化、教育現場の対応、世界のAI規制の動きなど、“AI化する社会”を多角的に捉えました。また、メタバースやライドシェア、SDV、アクセシビリティ、ECの物流問題などデジタルサービスのトレンドや課題、さらには惑星間インターネット、量子インターネットといった次世代通信の研究まで、31人の専門家が深堀りします。

10大キーワードで読む2024年のインターネット



01 レスポンシブルAI
02 データガバナンス
03 グリーントランスフォーメーション
04 デジタルツイン
05 アプリストア規制
06 偽情報
07 オリジネーター・プロファイル
08 惑星間インターネット
09 グローバル・デジタル・コンパクト
10 デジタルインクルージョン

(執筆協力/仲里 淳)

10大キーワードで読む2024年のインターネット



巻頭言「私たちが望むインターネットに向けて」

江崎 浩●一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)理事長



第1部 テクノロジーとプラットフォーム

1-1 アプリケーションと開発

加速する生成AIとLLMの動向
青山 祐輔●株式会社 企
2023年はビッグテックによるLLMの開発が進み、生成AIがますます世界を席巻した。多くの企業がAIを利用して業務の効率化を図っているが、権利問題などの課題も多く、今後規制が強まるリスクもある。

広がる“都市のデジタルツイン”とDX
片岡 義明●フリーランスライター
現実世界から収集したデータをサイバー空間上に再現する“都市のデジタルツイン”。そのインフラとなる3D都市モデルや点群データの整備が進み、さまざまな活用事例が生まれている。

量子インターネットの可能性
永山 翔太●株式会社メルカリ 研究開発部R4D シニアリサーチャー/量子インターネットタスクフォース 代表
暗号通信ほか情報処理社会を変革する次世代ネットワーク技術として期待される量子インターネット。早期にアーキテクチャの研究に取り組み、技術の現状と進展を折り込みながらの試作開始が求められる。

アクセシビリティと共生の技術
仲里 淳●フリーランスライター/インプレス・サステナブルラボ研究員
インターネットやデジタル技術の発展と普及により、多くの人々が恩恵を受けている。一般のビジネスや娯楽だけでなく、今後はバリアフリーやアクセシビリティといった福祉分野での広がりが期待される。

1-2 クラウドとモビリティ

クラウドサービス市場の動向
林 雅之●国際大学GLOCOM 客員研究員(NTTコミュニケーションズ株式会社 勤務)
生成AIやDXによる需要の増加、政府による「ガバメントクラウド」の推進などを背景に市場環境が変化。日本独自のLLM基盤整備や「分散クラウド」の加速により国内事業者の動きが注目される。

SDVが切り拓くモビリティの未来
佐藤 雅明●東海大学 観光学部
自動車開発において、ソフトウエア視点での設計(SDV)の注目度が増している。ネットワークによって「つながる」クルマは、モビリティサービスとして新しい社会を支えるインフラとなる。



第2部 デジタルエコノミーとビジネストレンド

2-1 コマースと金融

Eコマースの最新動向
田中 秀樹●株式会社富士通フューチャースタディーズ・センター 業務部門 部長
Eコマース市場はリアル回帰の反動を乗り越えて食品カテゴリーを中心に成長を続ける。2024年問題に備え、大手は物流整備に取り組む。モール化など新たな差別化方法も見えてきた

決済プラットフォームの動向
多田羅 政和●電子決済研究所 代表取締役社長/電子決済マガジン編集長
乗客の利便性が飛躍的に高まる「タッチ決済乗車券」やスマホがそのまま決済端末になる「COTS決済」など電子決済は着実に進化。一方で決済システムの安全性確保はキャッシュレス社会実現への課題となる

2023年の暗号資産の動向
岩下 直行●京都大学公共政策大学院 教授
ビットコインは大きく値上がりして前年の暴落から回復したが、DeFiやNFTは回復せず、ステーブルコインも減少。暗号資産と伝統的金融との距離が縮まることへの期待とリスクが注目される。

2-2 デジタルコンテンツとメディア

2023年のテレビとインターネットの動き
倉又 俊夫●日本放送協会 メディア総局メディアイノベーションセンター チーフ・プロデューサー
コロナ禍が落ち着きスポーツ中継のビッグイベントが復活した2023年は、配信サービスの統合や新規の話題が続いた。ハリウッドでも生成AIの影響が目立つ。飽和状態と言われるサービスの今後が注目される。

2023年のデジタル音楽の動向
荒川 祐二●株式会社NexTone 代表取締役COO
生成AIがアーティストだけでなく音楽ビジネスの周辺にも大きな影響を及ぼし、デジタルシフトした音楽市場にさらなる変革を促す。フェイクなどAIが悪用される一方、アーティストはAI利用に前向きだ。

メタバースとオンラインゲームの動向
澤 紫臣●アマツ株式会社 CCO
世界で最初に「メタバース」の語を用いたSF小説『スノウ・クラッシュ』から30年余、国内メタバース事情は大きく変化した。その概況と、近接かつビジネスで先行するオンラインゲームの動向を取り上げる。

国内インターネット広告市場の動向
高野 峻●みずほ銀行 産業調査部 インダストリーアナリスト
厳しい競争環境を背景に、コンテンツ強化やフルファネルマーケティングを目的としたサービスの統合や連携が増加。生成AIはインターネット広告市場の成長率をさらに高める可能性がある。

2023年のデジタル音楽の動向



2-3 通信サービス

国内モバイルキャリアのビジネス動向
天野 浩徳●株式会社MCA 通信アナリスト
通信事業の底入れが見える中、携帯各社は「法人」と「新領域」の強化を急ぐ。5Gネットワーク整備の一方で、衛星通信サービスが開始。2024年の競争軸は「経済圏競争」へ突入する。



第3部 インターネットと社会制度

3-1 法律と政策

インターネット関連法律の全体動向
岡村 久道●弁護士/京都大学大学院 医学研究科 講師
民事関係手続デジタル化法、ADR法、地方自治法などが改正され、さまざまな手続きのデジタル化が可能となった。不正競争防止法等改正、性的姿態撮影等処罰法成立によりデジタル化の弊害が是正された。

世界におけるAI規制の動向
藍澤 志津●一般財団法人マルチメディア振興センター ICTリサーチ&コンサルティング部 リサーチディレクター
開発競争力を維持しながら責任あるAIの実現を目指して米国、中国、欧州などで法制化の動きが進む。G7の広島AIプロセスをはじめ、生成AIのリスク低減に向けた国際協力の枠組みも始まっている。

デジタルプラットフォームを巡る規制の動向
寺田 眞治●一般財団法人日本情報経済社会推進協会 客員研究員
EUで2023年11月にデータ法が成立。日本も影響を受けて、公正な競争環境のための議論が高まる。プライバシー保護や偽情報を巡っては、国家経済安全保障という視点も必要に。

EUのWeb 4.0戦略
寺田 眞治●一般財団法人日本情報経済社会推進協会 客員研究員
2030年以降のデジタル化された世界に向け、EUが人材・ビジネス・公共サービスを通貫する総合戦略を発表。デジタルと現実をつなぐためには、デジタルIDの普及とTrust(信頼性)が鍵に。

日本におけるライドシェアビジネスの論点
白石 隼人●KPMGコンサルティング株式会社 アソシエイトパートナー
2024年4月から部分的に解禁されるライドシェアは、利便性や経済性、革新性、環境への配慮などの点からも注目される。法整備が進み安全性が担保されれば、日本でも一気に認知度が高まり利用が広がるはずだ。

3-2 市民と教育

オリジネーター・プロファイルの取り組み
クロサカ タツヤ●オリジネーター・プロファイル技術研究組合 事務局長
ネットメディアの信頼を損なう偽情報やアドフラウドの氾濫。記事や広告の発信者の真正性を検証し可視化できるシステムを作るため技術研究組合が発足した。ウェブブラウザー標準搭載を視野に実験を重ねる。

日本の学校現場における生成AIの現状と今後の展望
関島 章江●株式会社電通総研 Xイノベーション本部
2022年末に突如出現した生成AIは日本の教育と教員の働き方を大きく変える可能性がある。GIGAスクール構想の経験が現場を後押しして導入が進む一方で、自治体ごとの格差に懸念もある。



第4部 サイバーセキュリティとインターネットガバナンス

4-1 サイバーセキュリティ

2023年の情報セキュリティ動向
世古 裕紀●一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC) 早期警戒グループ 脅威アナリスト
2023年は、SSL-VPN製品やオンラインストレージの構築に用いられる製品で新たに見つかった脆弱性を悪用した攻撃に加えて、社会インフラを狙う深刻なランサムウエア攻撃が目立った。

フィッシング詐欺被害の現状と対策
加藤 孝浩●フィッシング対策協議会 運営委員長
2023年は、フィッシング詐欺の報告件数がさらに増加した。不正送金とクレジットカード情報の盗用被害も増加しており、なりすましメール対策と認証強化がすべてのインターネットサービスで必要である。

生成AI時代のフェイクニュースの広がり
平 和博●桜美林大学 教授
生成AIの爆発的普及で、フェイクニュースの脅威は真偽の境界を揺るがす新たな時代に突入した。イスラエルとハマスの軍事衝突では「AIフェイク」拡散の一方、「本物」が「フェイク」とされる騒動も起きた。

4-2 トラフィックと通信インフラ

5G/Beyond 5Gを巡る周波数政策の動向
飯塚 留美●一般財団法人マルチメディア振興センター ICTリサーチ&コンサルティング部 シニア・リサーチディレクター
2023年の世界無線通信会議では5G/Beyond 5G に向けて新たな周波数が確保された。日本を含め各国でBeyond 5Gを目指した取り組みが進んでおり、モバイル周波数の新たな利用も拡大している。

惑星間インターネットの実現に向けて
金子 洋介●IPNSIG President
インターネットの次なるフロンティア「宇宙」。まさに今、地球上のインターネットと同じような人類共通基盤を宇宙空間に築けるかが問われている。

インターネットトラフィックの動向
長 健二朗●株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)
福田 健介●国立情報学研究所
コロナ禍を経た2023年のインターネットトラフィックは前年同様、全体的に堅調な増加で、目立った変化は見られない。2020年の急増と比較すると安定した傾向が続いている。

国内データセンターサービスの動向
三柳 英樹●株式会社インプレス クラウド&データセンター完全ガイド 編集長/クラウドWatch 記者
建設続くハイパースケールデータセンター、電気代・建設費高騰の影響で投資額の増大は続く見込み。2024年はAIサービスの拡大により、高い電力供給や冷却技術に需要。

4-3 インターネット基盤

ドメイン名の動向
横井 裕一●株式会社日本レジストリサービス(JPRS) 広報宣伝室 室長
全世界のドメイン名登録数は約3億5930万件となり、JPドメイン名の登録数は175万件を超えている。ドメイン名の廃止をきっかけとしたトラブルやリスクにも注目が集まった。

IPアドレス利用の動向
川端 宏生●一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC) IP事業部
IPv4アドレスの分配は一段落を見せるものの、新興国を中心に需要は継続の傾向。IPv6への対応は進み、普及から活用段階へとステージを変える。

DNSの動向
森下 泰宏●株式会社日本レジストリサービス(JPRS) 技術広報担当・技術研修センター
WindowsとChromiumの組み合わせでDNSのTCPクエリが増加する事例が発生し、対応が進められた。2014〜2015年に流行したランダムサブドメイン攻撃が再流行し、国内での被害事例も報告された。

インターネットガバナンスの動向
前村 昌紀●日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC) 政策主幹
RIRでは、AFRINICの統治機構不全に至った騒動がAPNICの選挙制度に飛び火し、関係者が対応を急ぐ。2016年のIANA監督権限移管で勝ち得た信託を技術コミュニティが堅持できるかが2024年の正念場だ。

IGF 2023レポート
仲里 淳●フリーランスライター/インプレス・サステナブルラボ 研究員
2023年10月に、インターネットに関する国際会議「インターネット・ガバンス・フォーラム2023(IGF 2023)」が京都市で開催された。国内外から多くの参加者が集まり、さまざまな議論が行われた。



第5部 インターネット関連資料

5-1 国内インターネット普及資料

5-2 デジタルコンテンツ資料

5-3 IoTその他の資料

5-4 世界のインターネット普及資料

付録 インターネットの主な出来事 2023


インターネットの主な出来事 2023

「インターネット白書」について

「インターネット白書」は1996年の創刊以来、日本のインターネットの成長や変化を毎年まとめてきたインターネットの書籍年鑑です。内容構成にあたっては、一般財団法人インターネット協会監修のもと専門家による寄稿と、市場動向調査により構成されてきました。現在は、一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)、株式会社日本レジストリサービス(JPRS)も加わり、3団体の協力のもと、「The Internet for Everything」というキャッチフレーズを掲げて、より広範なインターネットの可能性をレポートしています。

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